酒と切腹と女

缶ビールは高いやつがうまい。ヱビスプレミアムモルツ、熟撰の3つがとにかくうまい。少しランクの落ちるビールと比べて値段の差をはるかに超える価値がある。安いビールや発泡酒の類は酔っ払って味がわからなくなった頃に飲めばいい。

俺はビールよりも日本酒が好きなんだけど、こと日本酒となると安い酒が好みだ。純米大吟醸だとか特別醸造なんちゃらとか、そういう大げさな酒より紙パックに入ってるような辛口のシンプルなやつが一番うまい。どういうわけか親父もそのまた親父も同じ趣味で、これが血というやつなのかと思う。じいさんに至っては自分ブランドの酒を造ってしまうくらいの酒好きにもかかわらず昔から安い辛口の二級酒ばかり飲っていたそうだ。

どうも最近ビールばかり飲んでる気がするのでそろそろまた日本酒に戻ろうと思う。ある日突然切腹することになった時に腹からビールが出てきたらみっともないが、吹き出て眼前にたまった鮮血の海に日本酒がそろりと流れてきたら風流ではないか。

問題はあの紙パックだ。飲み終えた空の紙パックが部屋の片隅に置いてあると、その一角からなんともいえない哀愁が漂ってしまって実にモテない。4リットル大五郎とホッピーの空き瓶がある家は酒飲みの底辺だと思っていたがまだこっちの方がかわいげがあるんじゃなかろうか。私はモテたいのです。