DJの価値

InternetとDJを読んで

乱暴にまとめると、インターネットの発達とともにDJが持っていた特権や価値が失われつつあるのではないかという話。記事によると、Autechreもこんなことを言っていたそうな。

DJにいたっては本当に大変な時代だ。以前はレコード・コレクションを増やしていく事でその存在意義も成り立っていた。(中略)DJがもっていた特権や価値は、今ではもうないんだ。

確かに音源と知識の量は多いほうがいいけれど、それはDJの特権や価値という観点からすれば本質ではない。(AutechreはDJもやるけど*1、彼らはどちらかと言うとインドア派の音オタクみたいなもんだからあまり気にしなくていい)

DJの特権はブースに立てることだ。DJの価値はプレイそのものにある。ブースの上から見下ろすフロアはいつ見ても良いものだ。あの煙たさも匂いも熱い照明も鼓膜を疲弊させる爆音もいつだってDJの味方をしてくれる。指先一つで変わるフロアの反応。気持ちよく躍らせたり、たまに休ませてやったり、客を無視して独りで盛り上がったり。気持ち良さそうな顔が見える。つまらなそうな顔が見える。女を口説いてる奴がいる。くたびれて寝てる奴がいる。キチガイプレイをした時に閑散とするフロアの中で、波長の合うほんの一握りの客が踊り狂っているとそいつらと暗黙の勝負になる。DJをするということは客と双方向のコミュニケーションを取るという実に人間的な行為だから、楽しみ方は無限にある。

ネットで自分のプレイを配信して何万人もの人が聴いてくれたとしても、この感覚は味わえないだろう。Ustreamとかニコニコ動画のようなインターフェースでこれに近いものが作れるかもしれないが、あの空気を演出するにはまだ圧倒的に役不足だ。テクノロジーはこの差を埋める方向に進化させられたらいいと思う。

最後に、たまに信じられている特権として「DJは女にモテる」という話がありますがそれは都市伝説でございます。

*1:Autechreのプレイは大好き